信頼しきるということ

駅までの道で、
毎朝、ある親子にすれ違います。

白杖をついた12歳くらいの男の子と、そのお父さんです。

おそらく養護学校への通学の付き添いなのでしょうが、
彼らが会話しているのを、わたしは一度も見たことがありません。

父と子、一定の距離を保って、
それぞれ、前を向いて歩いています。

父は子に対し、完全な信頼をもって、
ともに歩きます。

そして子も、父のその揺るぎない眼差しのなかで、
一歩一歩、白杖とともに足を出すのです。

彼らは会話していなくても、
心でちゃんとコミュニケートしているのですね。

個を保ったまま、相手を完全に信頼しきって、共に歩く。

それが、わたしたちが相手にできる
最小、かつ最大のことかもしれません。

それを毎日見せてくれるその親子に
こころの中で深々と頭を下げながら、駅まで向かう毎日なのでした。

 

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